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白いパンプスを履いた老婆たち

 

 


8月24日、今日の京都市左京区は晴れ。

少し遅いめの朝にゴミを出すだけで暑い。

 

 

そしてこの話は、まだ夏真っ盛りの、
太陽がジリジリと照りつける暑く気怠い昼下がりの出来事です。

 

 


道路幅20メートル超えの交差点。

 

 


車で左折しようと、横断してくる人に注意を向けていた時、

私の目は、右方向、
対向車線側の歩道から横断歩道を渡ってくる2人の老婆の姿をとらえた。

 

 


丁度左側から渡る自転車もあり、
ゆっくりと歩を進める老婆たちを待つこととなった。

 

 


歩みは遅く、
必然的に観察することにもなった。


老婆は2人とも白いノースリーブに、
少しかたそうな白いパンプスを履いていた。

そのパンプスは、筋肉が減り筋張った細い脚には不釣合いに感じられた。

 

 

歩は遅いが、ヒールを履いた膝は曲がっていない。

かなり履き慣れているようにも見える。

 

 

薄手のノースリーブは、下着の上の肉を拾い、
まるで数十年前にシミーズとよばれていた下着のようにも見えた。

 

 


その一角だけ時代がトラップしていた。

 

 


2人の関係は姉妹か友人か。

場末のバーのママか踊り子だったのか。

必要以上に主張する白いパンプスが、
安っぽい艶っぽさを老いたカラダに纏わせていた。

 

 


前を行く老婆が横断歩道の真ん中あたりにさしかかった時、
急に斜めに車道を渡り始めた。

 

 

3メートルほど離れてついてきている老婆が気になるようで、
後ろを振り向き振り向き斜めに渡る。

 

 

彼女たちが向かうところは、交差点からさほど遠くないところにあるバス停だった。

 

 

2人に2車線を塞がれ進めない車の運転手たちは、
誰一人として怒ることもなく、

まるでカルガモの横断を待つように、

その光景に釘付けになっていた。

 

 

 

白いパンプスは、
もしかしたら彼女たちの最高のお出かけ靴だったのかもしれない。

 

 

昔履いていたお気に入りの靴と似ていたのかもしれない。

 

 


熱せられたアスファルトを踏みしめながら進む白いパンプス。

 


遠ざかっていく少しくたびれた背中。

 

 

そんな老婆たちの後ろ姿を見ていると、

彼女たちが歩んできた歴史が垣間見えたような気がした。

 

 

 

 

 


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